第4回ニ(略

ニートって言うな!』本田由紀 内藤朝雄 後藤和智
「ニート」って言うな! (光文社新書)

まあ、長々と続くのもアレなので今回で終わりです。


三人目の後藤氏はバスジャック事件などを引き起こした当時16歳でした。当時17歳と言えばキーワードになるくらい(もちろん嫌な意味で)特別視されていて、17歳になることを真剣に悩んでいたそうです。こうしたバックグラウンドに基づき若年者の立場からこの本の言いたい事をサポートしています。というより、ニート論(もうこういう言い方は本来できませんが)を含めた青年ネガティブキャンペーンの当事者としてリアルな感想・分析を披露しています。

特に若いもん一般にとってはニートって何かって事より「働いたら負けかなと思ってる」ってのがムカつく象徴であり、それをニートという記号にして「ニート必死だなワロス」という使い方の方がしっくり来るわけで、これについての背景、流れへの分析も行っています。

ネット上において、このような形で「ニート祭り」が盛り上ったのは、『とくダネ!』に登場した二十四歳男性の極めて特徴的な風貌に加え、「働いたら負けかなと思ってる」という「反社会的」な発言の「ネタ化」に強く関わっている。」

そうした上で、『サンデー毎日』『AERA』『読売ウィークリー』等の週刊誌、更に『ダイヤモンド』『エコノミスト』『東洋経済』等の経済誌、加えて『プレジデント』のような雑誌でニートをどう扱ってきたかについての分析も行っています。とりあえず『読売ウィークリー』ってやっぱダメだな。

で、更に年齢層別ニートへの反応についても朝日新聞の投書を元に分析をしています。ポイントとしてはニートに対する反応が否定的なのは若年層(20歳未満の学生中心)および熟年層(60歳以上)であり、一方その間の層(30代〜50代くらい)は肯定的とはいかないまでも教育の問題としてとらえ、ニートそのものは問題にしていないそうです。

どっちもどっちと言えますが、若年層、ぶっちゃけ学生にとってニートは「なりたくないもの」である事だけは明らかのようです。これはこれで良い傾向と思います。学生が自身のこれからの職業について考えるきっかけとなり得たってだけでもニート論の意義は見出せそうですね。

さらに、後藤氏はニートについて書かれた他の書籍についてもぶったぎりもとい分析を加えています。以前私が読んだ「働こうとしない人たち」に対する分析も行っています。大きく3つに分類しています。
大多数が「報告書、分析ないしは自分の取り組みを紹介したもの」


という感じで分析を進めながら、これまで加熱しまくってたニート論について冷水を浴びせ、この本の趣意に繋げていきます。とりあえず、一通り読んで自分の中に存在していたニートに対する思いやわだかまりにケリをつける事ができたので、そういう意味では読んでよかったといえるでしょう。