具体的なトレーニング、コーチングに言及

『ナンバのコーチング論』織田淳太郎 光文社新書
ナンバのコーチング論 次元の違う「速さ」を獲得する (光文社新書)

久しぶりのナンバ本です。この本では、これまでより一層ナンバ走り−つまり走ること−に焦点をあてています。サブタイトルも「次元の違う速さを獲得する」とあります。

最近個人的に目覚めつつあるのが、脱力(バキ風に言うのであればシャオリー、消力)です。これを鍛えるためにある仕掛けを最近しているのですがそれは今度。

「頑張る(力む)」ことが自己向上への唯一の道だという思い込み。それが能力を殺ぎ落とす一因になるかもしれないという可能性さえ受け入れず、私たちはひたすら歯を食いしばって、この世を生き長らえてきた。それが固定的観念として私たちが抱いてきた道徳であり、教育であり、人生の意味であったことは、少なくとも否定できない

力まない、リラックスするということと頑張ることをイコールにするとは限らないのですが、少なくとも歯を食いしばって徹夜したところで残るのは自己満足だけで仕事の成果は残らない、残したければ余力を残しリラックスしつつ粛々と進めるしかないと思う今日この頃。まあ色々言いたいけど、高い位置に立った物言いになりそうなので言いませんが。

話を戻して、強い筋肉で戦うよりはリラックスした体で戦うというスタイルになりつつある今日この頃。スポーツの世界でもマラソンなどでは少しづつ証明されているようです。


私は小・中学生と剣道をやっていたのですが、剣道についてもこの本では言及していました。剣道で正眼と言えば腰を軽く浮かせるのはいいとして、踵を浮かせることも教えられました。そして腰の運びによって動く。ところが、宮本武蔵は『五輪の書』においてこのように言及しています。

(訳文)
足の運びは、爪先を少し浮かせて、踵をつよく踏め。足のつかい方はその時によって大小遅速の相違はあるが、ふつうに歩むように使うこと。飛ぶような足、浮き上がった足、固着するような足の三つはよくない足である。
足のつかい方では、陰陽ということが肝心とされている。陰陽の足とは、片足だけを動かすのではなく、斬る時も、退く時も、受ける時も、右左、右左と足を運ぶのである。くれぐれも片足だけを動かす事がないよう、十分に注意しなければならぬ。

むしろ踵を強く踏むということなんですな。実は踵に力を入れることは、(ふんばらずに)前への力を作り出すということであり滑るような両足の運びの原動力となります。
最近通勤に新宿駅を利用していますが、朝や夕方のあのベクトル乱立状態の駅構内を人にぶつからずかつ最短時間で目標(小田急のホームから丸の内のホーム)にたどりつくのにもこの動きは役に立ってます。もっと他の事にも役立てないと浮かばれない気がしますが。
話が剣道から逸れましたが、要はこれ全て体の使い方、しかも今まで常識と呼ばれていたことを覆せるかというところに行き着きます。スポーツにしても何にしても、体を動かすときに様々な姿勢を試みて、その中から自分にとって最も力を発揮しやすい体の動きを発掘する。

そういうことを繰り返してた歴史に基づいて武術ってのは成り立っているんだなぁと先週のサンデー『史上最強の弟子』を読みながら思いました。