成熟した大人の文章
『コールドゲーム』 荻原 浩
高3の夏、復讐は突然はじまった。中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。犯行予告からトロ吉が浮び上がる。4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、転校したトロ吉の行方は誰も知らなかった。光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが―。
内容もさることながらあとがきの言及が興味深かった。この作者は初めてなのですが、筆体が「大人」であると言っています。まあ抽象的ですが要は、論理性やバランス(情景・心情・台詞とか)において成熟しているということなんだと思います。
それがいいか悪いかは個人の好みだとしても私は好き。というか相性が良い。
してみると、貫井徳郎や二階堂黎人に関しても同じことは言えていそう。愛想は良くないけど、論理的でバランスが良く、それが馴染みやすいってことだと思ってみた。
自分、インストラクターもやっていますが、(わかりやすいと評判のこのインストラクターぶりを)自己分析するとこれもとにかく論理的というか論理構成にこだわる。一方で抽象論・一般論・具体例・身近な具体例・雑談(余談)のバランスにもこだわります。
もちろん、こうした事と内容が面白いかは全く別の話(ソフトウェア的に良くできたゲームが面白いとは限らない)なのですが、いやもちろん中身も面白かったですよ。野球少年が不良になりそうになりながら大人になっていく過程が。