やっぱこっちの宮部は時間を忘れるな

誰か Somebody (カッパノベルス)
『誰か』 宮部みゆき カッパノベルズ

宮部みゆきの新作です。それも社会派宮部みゆきの新作です。(ちなみに、他に時代劇宮部みゆきとファンタジー宮部みゆきがいますが、この宮部みゆきが一番好きです。しかし宮部みゆき連呼してるな宮部みゆき

今回のテーマは自転車事故。と言えるほど前面には押し出していません。『火車』や『理由』が特定の社会問題に対する綿密な取材を元に構成されていたのと比べればテーマに関する押し出しは弱いです。しかしそれでも、淡々としてはいるのになぜかリアリティに溢れる描写で相変わらず時間を忘れて読みたくなる本でした。事実後半100ページ位は一気に読んでしまいましたし。

自転車に刎ねられて亡くなった一人の男性の半生を調べる事になった主人公(妻子あり)は調べるうちに謎の組織から命を狙われる事にはなりませんし、新たな殺人事件も発生しません、ミステリアス美女とかも出ないし、少しずつ事実が明かされていくだけです。漫画とかドラマにしたら絶対つまらない。なのに、どうしてこんなに面白かったんでしょ。