ダレカガナカニイル・・・ 井上夢人 講談社

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)
まあ、よくある幽体離脱系の代物です。ある時を境に自分の中に別の人格の声が聞こえてきて、殺人事件が起きて以下略というモノですが、ミステリーらしくオチの大どんでん返しが素晴らしかったです。かなり意表を突かれました。この手の話は、自分の中の人格の正体を探り、それを少しづつ明かしていく過程が面白いのですが(多少間延び感があったとはいえ)、この話にしても物語の中盤くらいまでは主人公は「俺は狂っているんだ」と言いつづけて中々自分の中に別の誰かがいるということを認めないあたり、それと始めは声だけだったのが、次第には感覚や動作なども支配するようになる人格とか、過程がリアルに描写されています。


ただし、殺人事件の理由が薄いことや、もう少しページを縮められそうな気がしないでもない。特に殺人事件のところ、終盤でトリックが明かされますがここの部分読み飛ばしてしまいましたからね。殺人事件と言っても死者一人の放火よりはもっと凄い犯罪の方が話にまとまりがつかなかったかもしれませんが、引き込むものはあったかもしれません。