『ブードゥー・チャイルド』歌野晶午 角川文庫

ブードゥー・チャイルド (角川文庫)
<<あらすじ>>
バロン・サムディという悪魔に腹を切り裂かれ、殺された黒人の子供「チャーリー」を前世の記憶として持つ少年、日下部晃士。彼の腹には前世の傷跡がくっきり残っている。そんな彼の周りで起こる連続殺人事件、それは失われた前世の記憶と関係があるものだった!晃士は妹と共に前世の謎を解き、殺人事件に立ち向かう、そこに現れる車椅子の天才少年。果たして、前世の記憶は真実なのか、そして驚愕の真犯人は?


えー、余裕があったのであらすじ式に話を紹介しました。
結構面白そうだったので、読んでみました。ちなみに、私が(特にミステリー)本を買うときは妙な共時性シンクロニシティ)に従って買うことがあります。今回の場合は、ブードゥー教が夢で出てきたからという理由です。(ゾンビは出てきていません。念の為。)


で、感想ですが・・・
どうもアレだなぁ。歌野晶午という作家自体、私に合わないのかも知れません。途中までは結構面白いんですけど、話が終盤になり、謎が解かれるにつれて面白くなくなっていきます。一部の京極と逆パターンですね。(『鉄鼠』『凶骨』。他の作品は導入・過程から最後まで面白かった)
多分、すごく説明的なんだろうなと思いました。トリックとか、背景知識とかが。テーマ自体は(多少ネタバレですが)体外受精、子宮外妊娠などを持ってきていて、結構興味深いのですが、それを13歳の車椅子の天才少年に喋らせるのは結局失敗だったかもしれません。嘘っぽいんだもん。嘘じゃないけど。
この時点でブードゥーとか無くなっているし。
最後の方が謎の説明だけに終わっているんですよね。ドラマとかで展開しない。激流打ち寄せる崖の上でとかじゃないから。それでもイマイチだけど。


ただし、一方で過程は傑作級です。主人公の前世が少しずつ判明されている過程はかなり引き込まれました。題名の「ブードゥー」もあいまって、とてもミステリアスな雰囲気を醸し出しています。
実際のところ、ブードゥー教じゃなくて良いような気もしてしまったのが唯一にして最大の欠点ですが(笑)。


まあ、意外と周囲の評価は高いようなので読んでみてもいいかもしれません。私が肌に合わないだけなんだろうな。これは。