『悪魔のラビリンス』 二階堂黎人 講談社文庫

悪魔のラビリンス (講談社文庫)
ラビリンスと言えばデビッド・ボウイですが(古)、今回は二階堂黎人の『悪魔のラビリンス』です。
二階堂黎人と言えば、江戸川乱歩作の猟奇なところを抜き出しつつ、エラリークイーンばりの本格ぶりが『地獄の奇術師』以来とても気に入っているのですが、新作です。新作。文庫ですけどね。先手を打っておきますが、京極を凌ぐボリュームの『人狼城』は読んでませんからね。もっとお金ばっかりあって暇のある時に読みます。ま、そんな時はめったにないですが。

で、二階堂黎人と言えば、女の子版明智小五郎とも言うべき二階堂蘭子です。もじゃもじゃの髪の毛、もといくせの強い巻き毛、神妙なる叡智、どことなく世間からずれている、でも胸に秘める正義感(あれ?変換これでよかったっけ?)とその筋には有名ですが、今回の作品はそのライバル「魔王ラビリンス」が出現します。
ネーミングセンスはどうかと思いますが、「魔王」の名を関するに相応しい残酷さと狡猾さをもって蘭子に挑戦してきます。
とりわけ、鮮烈だったのがその残酷性(というか、ここまで来るともう猟奇性とでも言うべき代物なのですが)です。初めの20ページで描写されるのですが、もう引きましたね。すごすぎて(注;誉めてます。)。猟奇すぎて逆に現実感ないんだもん。特に死体の○○を○○して、○○するとこなんか、ヤバイ。もう友達にしたくない。絶対。死体のですよ、死体の。

ともかく、このラビリンスとの対決が2編収録されています。作者の心積もりではまだまだ続くようで、楽しみではあります。まあ、探偵が優秀なのはいいけど、ライバルいないとね。シャアにアムロあり(逆だ)、ケンシロウにジャギあり、銀河・北斗にアルテアあり、ガトーにシーマあり(そっちかよ!)。

子供のころ、江戸川乱歩を読みまくったのですが、ほらあったじゃないですか、厚さ3cmくらいで活字大き目の少年推理なんとかシリーズ。
「電人M」「怪人二十面相」「黄金の髑髏」「人間椅子」「地獄の道化師」・・・忘れた。もっとあったのに。
そんな中でも、「蠍女」(注;日活とはなんの関係もないです)「時計塔の恐怖」「悪魔の十字路」あたりは異質でしたね。前述した作品は主に明智小五郎怪人二十面相の対決を描いています。構図がもう善対悪。しかも子供向け。
しかし、後者の作品は怪人二十面相出てきません。「もともと大人向け」というコンセプトで、リアリティのある犯罪者(「悪人」ではなく、敢えてこう表現しますが)が出てきて、猟奇性の高い殺人を犯していくのですね。こっちの方が、怖かったけど面白かった気がします。
今回もそんなノリ。がんばれラビリンス。負けるな蘭子!以上。