『芸人』永六輔 読了

芸人 (岩波新書)
自分の読書の方向性が少しずつわからなくなってきました。実に混沌としているなぁ。我ながら。まあ、知性などというものはそんなもので構わないのですが(乱暴)。


で、この本ですが藝(芸は植物を栽培するとかそういう意味があるそうなので、正しくはこちらのようです)−習って身につける技−というテーマについて、歌・テレビ・スポーツなどに関わる人の言葉をまとめた前半部と永六輔氏による藝についてのエッセイ、三波春夫との対談をまとめた後半部から構成されています。


前半部の語録もかなり面白かったです。芸(もう面倒なのでこっちにします)についてのシニカルというか、誇りみたいなものが溢れる言葉が揃っています。いくつか引用させていただきますと

「芸人でよかった
 だってこんなに悲しくても
 笑っていなきゃいないんですもの。」

号泣(笑)。こんな言葉がちりばめられています。自分は人間であるために芸人でありたいと思いましたねえ。


この本によると、元々芸人というのは士農工商身分制度から外れた日陰者、河原者であったそうです。社会においては、最下層すらない、人として認められていないけど芸を持っている。その矜持があった芸人という人達には逆にあこがれすら覚えるところです。現代を振り返ってみると、芸すらマトモになり芸人がテレビを通して溢れ、それが社会に認められ、若者があこがれる職業になっていることを考えると何だろうなこの世の中は、と思ってしまいます。


あと、後半部で面白かったのは三波春夫氏との対談ですね。三波春夫については私は浅学なので殆ど知らなかったのですが、実は凄い勉強家で日本の歴史にとても詳しいんですね。しかも、話がとぶ、とぶ。私も同僚とよくこんな話をします。というわけで、人生の何の役にも立たないと思われる対談ですが、とても楽しく読みました。笑った笑った。なんで太平洋戦争から平清盛に飛ぶねん!


語録なのでボリュームは少なく、あっさり読めましたが内容の濃い本でした。オススメ