よくがんばった。感動した!

『追憶のかけら』貫井徳郎
追憶のかけら (ジョイ・ノベルス)

交通事故で愛妻を失った大学講師が、入手したある作家の未発
表手記。失意を乗り越えるためにも、そこに書かれていた自殺
の真相に迫ろうと、隠された真実を追いかけていくが、いつし
か男の身にも降りかかってくる災厄。そこには恐ろしい悪意が
満ちていた…。二転三転する物語の結末は?著者渾身の力作。 

作者HPより

内容説明が難しい物語です。刑法上の犯罪は起きないし、サス
ペンスの要素も希薄。かといって普通小説に近づいているわけ
ではなく、紛れもなくミステリーです。駄目男の再生物語とも、
中年男の青春小説とも読めるかもしれません。

全俺が泣いた!

いやはや、感動の一作ですわ。巧妙に張り巡らされた罠と、次々と虚実引っ繰り返る事実、ということでミステリーとしても完成度の高い一品ですが・・・

何より心を打ったのは主人公(大学講師)の情けなさっぷりと、それでも最後は愛娘と亡き妻への思いを再確認するくだり。特に最後のシーンではとても涙なしには読めませんでした。(実際には電車だったので涙を流すわけにはいかなかったけど)

いやこれ、もう少し謎解きを簡単にして映画化したら普通に感動できるレベルじゃね?