俺梁山泊の一人だったんじゃね、前世は。

水滸伝 曙光の章』北方謙三
水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)

北方版『水滸伝』待望の文庫化!
北宋末期、汚濁しきった政府を倒すため、立ち上がった漢たちがいた――。
北方謙三が描く壮大な革命譚、ついに文庫版刊行。司馬遼太郎賞受賞作。
全19巻、月1冊ずつ刊行予定。(解説/北上次郎

って位に私は水滸伝が好きです。前世刑事だったって事はおそらく昔の中国の官吏だった可能性もあり、その正義漢ゆえに梁山泊に流れたというのはありえる話。とすると、美髭公朱ドウかソウシ虎(羽の生えた虎)雷横あたりで。ないない。
で、原典とは解釈、ストーリーが異なる『北方水滸伝』が、この度刊行されたので一気に読みました。話だけは知ってたんだけどね。


面白い解釈としては「塩の道」。梁山泊のあれだけの人物、兵士を養うための経済力が説明されていないので、塩を交易する道を押さえていたという事を前提として話が進みます。いろいろな意味で合理的になるのでこれはよし。で
で、人物ですが、私水滸伝の基準は(友達の家にあって、読み続けた)横山大先生のマンガなので人物のイメージはそこが出発点なのですが…


ポイントA、花和尚魯智深が思索的。横山版では

「やいやい、花和尚魯智深とは俺様の事よ。かかってきな」
「いっけねぇ、殴りすぎて殺してしまったい」
「親父、酒!」
「グー、グー」

って感じの見事なまでのバカ破戒僧なのですが、北方版では塩の道を探り、いろいろな好漢を説得する思索的な僧侶になってます。寝ぼけて地蔵とセックスして、しかもイッてた男がですよ。おまけに葬紋神ホウ旭にまで人の道を説く始末です。まあ元々バカには黒旋風李キがいるしでキャラ被ってたからいいんだけど。



ポイントB、王進、豹子頭林沖、九紋龍史進の内面と成長。ここら辺の流れ、下りが非常に掘り下げられて生き生きしてるのが感激。腐敗した宋の禁軍の武術師範である武に生きる王進のつもりが生来の真面目さゆえに疎まれて都落ちしてしまった。その王進よりは器用にやってたつもりなのにハメられて、妻を失い、投獄されてしまった林沖。都落ちした王進に鍛えられてジャイアンから武将にクラスチェンジし、それまで嫌っていた盗賊(陳間虎張達、白カ蛇陽春、神機軍師朱武)を煩悶しながら認めるくだり。

特に林沖が獄中で妻を愛していた事に気づき、悔やみ続ける下りとか、仲間のために己を省みない盗賊三人を見てツンデレってしまう史進とか。

(意訳)「勘違いしないでよね!殺してしまうと統制を失った
ならず者にわたしの村を襲われるから解放してあげるだけなんだからね!
決してあなた達三人の心意気に打たれたからじゃないんだからね!」

他にも玉麒麟魯俊儀と浪士燕青がちょっと薔薇だったりするのですが、ここら編は2巻以降でもっと明らかになるのであろうな。
というわけで、内面描写が深く、生き生きとしてるのでこれはこれでワクワクする代物になってました。

ああ、余談ながら今回紹介する人物、称号、苗字、名前のセットで記述しています。昔はポケモン並に全部覚えていましたが、まだ残っているか挑戦。

余談2。男女の描写がエロかったです、例えば林中の妻が高球(悪役)に犯されるシーン。私があと15若ければ余裕でオカズにしていたクォリティ。