要はうしとら系

バーティミアス-サマルカンドの秘宝』ジョナサン・ストラウド 理論社
バーティミアス (1) サマルカンドの秘宝

続きです。

  • 悪魔からの視点

この物語を独特なものにしているその最大の特徴はナサニエルの召還した悪魔であるバーティミアス視点で語る部分は半分以上を占めていることです。悪魔だけに性格もよろしくないのですが、頭の回転は速く、機転が利き、逃げ足も速いというヒーローじみた悪魔です。
このバーティミアス視点で物語が語られている部分では脚注がつき、小粋なデーモニック・ジョーク(?)が披露されています。まあ手垢にはまみれていない程度には珍しくない描写ですが気は利いています。

  • ロイヤルでない主人公

ハリー・ポッター』が嫌いな人の理由としてよく挙がるのがハリーがあまりにも優遇されすぎという点があります。クィディッチチームの重要なポジションを任されたり、学校代表になったり、ハリー好きにはたまらないんでしょうが、ストーリー的には無理がありすぎ。
なのですが、対してナサニエルは普通の魔法使いの弟子です。まあ優秀であるという点が若干違いますが。ただ、師匠のように恵まれなかった割には人格はそれほど歪んでもいなく、師匠の敵討ちをするというところも見せてくれています。いずれにしろ読者である子供達にとっては比較的(精神的に)身近な存在として描かれています。

  • 伏線があまりない

ハリーポッターと異なり、伏線があまりありません。全くないのは物語としての魅力に欠けますのであることはありますが、膨大な数の伏線を張り巡らすハリーポッターよりは少ないです。伏線マニアの私には多少欲求不満ですが、伏線は情報量の増加に繋がりますから、よっぽどわかりやすいかと思います。

と、考えると普通の男の子と悪魔のふれあいという点が物語の魅力なんだなと思います。悪魔という性格の悪い物を置くところは初期の『うしおととら』によく似ていますね。ていうか似すぎだろ。
ただ、私をして今世紀最高の少年漫画と呼ばしめた『うしおととら』に及ぶためにはこの設定を今後どのように持っていくかにあるでしょう。よっぽど気になれば続きを買うかもしれませんがね。